平成の大合併以降のふるさとの移り変わりと今後を考える「ふるさと新時代」です。4回目は薩摩川内市。

鹿児島県内で最も早い、2004年に9市町村が合併して誕生した薩摩川内市は、この20年で人口が10万5000人から9万人余と1万5000人減少しました。過疎化が止まらない中、地域の力をどのように維持するのか、現状そして今後に迫ります。

薩摩川内市祁答院町で4つの小学校が統合され、この春開校した全校児童108人の祁答院小学校です。地域の小学校はこれで1つになり、子どもたちの8割が最大12キロの通学距離をバスで通っています。

そのひとり、6年生の早崎鈴華さんです。友だちも増えましたが、閉校した藺牟田小学校に最後まで通いたかったと明かします。

(早崎鈴華さん)「もっと最後まで(藺牟田小に)通いたかったなという感じ。ちょっと悲しい」

学校が統合した背景には、薩摩川内市の中でも急速に進んだ旧祁答院町の人口減少があります。1950年には1万人(1万632人)を超えていたのが、合併当時4600人余り(4686人)、今では2900人(2903人)にまで落ち込んでいます。20年間の減少率は東側・旧4町で最も高い38パーセントです。

鈴華さんの家は前の藺牟田小学校からは500メートルでしたが、新しい学校からは7キロになりました。鈴華さんは5人きょうだいの長女。小学生の妹や弟もあわせ、4人でバスに遅れないように母親の支えになり、午前7時半すぎにはバス停に向かいます。

(父親・公寿さん)「早く食べないとバスが来るよ」

(母親・結子さん)「(朝は)戦争。起きない子たちがいるから。乗り遅れたら送っていかないといけない」

(子どもたち)「行ってきます」

(鈴華さん)「(弟や妹を)起こしたり、準備しないといけないから大変。(Q弟や妹は言うことを聞いてくれる?)聞かないときもある(Qそういう時はどうする?)強く言ってどうにかする」

鈴華さんの父親で、市内で自動車整備業を営む早崎公寿さん(33)です。曾祖父の代から5世代通った小学校の閉校は残念なものの、魅力あるふるさとを盛り上げていきたいと気持ちを新たにしています。

(父・公寿さん)「水がおいしくて、風は透き通っていて、人が良い。これからまだまた藺牟田・祁答院を盛り上げていかなくてはいけない」

2004年10月、平成の大合併で県内で最も早く誕生した薩摩川内市。旧川内市と、甑島など薩摩郡のあわせて9市町村が合併しました。当時、人口は県内2位の10万5000人。(10万5136人)それが20年間で9万人余り(9万326人)と1万5000人近く(1万4810人)減りました。

市は、要因のひとつが若者の地元就職率の低さとみて、地元企業の合同説明会や、高校生に市の政策について提言してもらう、みらいアドバイザーの取り組みなどを進めました。5年間で地元就職率は17.9パーセントから、去年31.7パーセントまで上がりました。

そして先週…いま市が進めている、産業人材確保と移住定住戦略。高校とタッグを組んで地元での就職をアピールします。この日訪れたのは川薩清修館高校です。取り組みで進路指導の教師が注目したのは…

「一番刺さったのは2番。薩摩川内市ここまでやるの?という反応があったのはここ」

学校が目をとめたのは奨学金の返還支援。大学卒業生らが市内で就職すると、奨学金の3分の2を上限300万円まで補助します。

(川薩清修館高校 福原健進路指導部主任)「お金の面で進学を断念しているのではないかというところも実際あったり、非常に能力は高いのだが、進学断念せざるを得ない。(生徒にとって)夢の実現につながっていくのではないかと感じている」

さらに30年にわたる事業が少しずつ実を結び始めている場所があります。川内駅から1.5キロ東側の天辰町地区です。この20年で人口が1400人(1436人)から2500人(2535人)と1000人余り増えました。

かつては田んぼと湿地帯でしたが、1993年に国の地方拠点都市地域・拠点地区に指定され、土地区画整理事業が続いています。鹿児島純心大学も立地し、将来6500人が暮らすまちを目指します。

(堂込和男さん)「周りはほとんど田んぼで、ちょっと雨が降ると湖みたいになるような状況だった。区画整理のおかげで3メートルぐらい高くしてもらっている」

この地で生まれ育った堂込和男さん(71)です。田んぼから新興住宅地となったふるさとについては…

(堂込和男さん)「子どもたちがすごく増えて、若い方たちが家を建てて、これから先まだ安心だなという感じをうける」

(薩摩川内市・田中良二市長)「まちづくりは根本的に長い歴史があって、地区住民の協力でプランを作り、こういった形が少しずつ開けてきている」

30年前、拠点都市係長として開発の最前線にいた元市職員の田中良二市長です。高速道路や川内港などのインフラをもつ薩摩川内市。新幹線が通る川内駅東口側の整備をてこに、人口減からの脱却を図ります。

(薩摩川内市・田中良二市長)「恵まれたインフラがある。それを生かすのは私の責任。定住・交流人口を増やしていきたい」

祁答院小学校6年の早崎鈴華さん。大好きなふるさと藺牟田・祁答院で人が増えるよう、自らも取り組むと話します。

(早崎鈴華さん)「人が優しくて交流ができるところが好き。少しでも(祁答院地域の)人を増やせるように努力していきたい」

合併から20年、人口減に向き合い、薩摩川内市が新たな時代を目指します。