「上の人は何も知らない、何を言っても届かない」…70年続く水俣病の苦しみを3分で話せと言う国に、被害者は根本的な意識の隔たりを見る
2024/05/09 06:30
伊藤信太郎環境相と面会する松崎重光さん=8日午後6時34分、熊本県水俣市の水俣病センター相思社
「苦しんで苦しんで亡くなった現状を(政治を動かす)上の人は何も知らない。これまで何を言っても届かなかった」。水俣病認定されないまま昨年亡くなった妻の話の途中にマイクを切られた水俣病患者連合副会長の松崎重光さん(82)は、伊藤環境相と懇談会で司会をした木内哲平特殊疾病対策室長に切々と訴えた。
「松崎さん個人に謝罪をしたい」と国から申し出を受けたが「同じように苦しむ人の代表として活動している」と全ての被害者への謝罪を要望。妻を含む水俣病犠牲者らの位牌(いはい)124体をまつった水俣病センター相思社を謝罪を受ける場に選んだ。妻を亡くした昨年4月からの思いの丈を原稿にし、練習を重ねる松崎さんを支えた永野三智さん(40)は「必死の訴えの最中に打ち切られ、国から被害を受けた立場なのに立場が逆転している。同じことをされたらどう感じるのか」と追及。木内室長は「被害者への思いが足りなかった」とうなだれた。
水俣病被害者・支援者連絡会代表代行の山下善寛さん(83)も個人への謝罪申し出は断り、複数の被害者団体からなる連絡会として謝罪を受けた。世間からは1団体に与えられた3分を超過したことへの批判もあったという。「70年近く続く問題を3分にまとめさせること自体が問題。税金を使って水俣まで大臣が謝罪に来ることになったが、その場で部下を指導すれば済んだ話。根本的な意識の問題だ」と指摘した。
4月26日の大臣会見で「地域の声をしっかり聞きたい」と話していた伊藤環境相。反省の弁を繰り返した一方、被害者側が提出した要望書への回答やその期限について、「検討する」「できるだけ早く、数カ月以内の回答を目指す」と言葉を濁した。被害者団体は訴える。「崩された信頼をどう再構築するのかが問われている」
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