裁判員に選ばれたら…仕事どうする? 整備遅れる企業の休暇制度 頭抱える中小零細「休まれると痛手」
2024/05/07 11:42
より良い裁判員制度構築へ向け、定期的に開かれる法曹三者と裁判員裁判経験者の意見交換会=鹿児島市の鹿児島地裁
裁判員は有権者から無作為に抽出され、選任手続きを経て最終的にどの事件に参加するかが決まる。選任手続き前の調査で、家族の介護など特別な事情がある場合のみ辞退できるが、単に「仕事が忙しい」だけでは認められていない。
最高裁の統計によると2023年、全国で3万1528人が選任手続きへの出席を求められたが、出席者は2万1637人と3割以上が欠席。正式な辞退申請をせず参加を拒否する人が多い実態が浮かび上がる。
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「候補者に選ばれました」-。従業員が申告した際、企業側はどのように対応すればいいのか。南国殖産(鹿児島市)は特別休暇を設ける。裁判員休暇中の有給か無給かは企業の判断に委ねられているが、有給と同じ扱いとしている。岩崎産業(同市)も裁判員休暇を導入している。
従業員から申し出があった場合、企業側は労働基準法7条により休暇取得を拒めず、休むことによる不利益な扱いも禁じられている。ただ従業員側にも選任の公表は禁止される規定があり、企業側は従業員が伝えない限り誰が選ばれているか把握できず、積極的なサポートはできない状態だ。
実際、南国殖産では候補者に選ばれた従業員はいるものの詳細は把握していないという。裁判員法は、休暇申請や同僚に事情を説明するため、期日などを知らせることは問題ないとしているが、担当者は「守秘義務もあり、ナイーブな話題。従業員もどこまで会社に話していいのか悩むだろう」と気遣う。
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約1400人の従業員を抱えるカミチクグループ(同市)は、裁判員対応の規定を設けていない。担当者は「休暇となると他の社員の負荷が増し、お客さまにも迷惑をかけることになる」と懸念する。ただでさえ少子化による人手不足の中、審理内容によって数週間にも及ぶ欠勤は、中小や零細企業にとってはデメリットにしか映らない。
市民感覚の反映をうたってスタートした裁判員制度。国民の義務とはいえ、企業の協力なしには成り立たない。一方で、企業側への浸透や支援体制は、まだ道半ばのようだ。
鹿児島地裁総務課は「休暇を取りやすい環境でなければ従業員が参加をためらってしまうだろう。有給休暇制度の導入が効果的と考える」と協力を求める。現役裁判官による企業への出前授業などを通して、「理解を深めていきたい」としている。
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