「買い物目的のアジア人」→「体験楽しむ欧米人」…クルーズ船寄港再開1年、客層様変わりで「おもてなし」に変化アリ? 鹿児島観光の最前線を追う

 2024/05/06 06:42
世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の説明に聞き入る欧米からのクルーズ客=1日、鹿児島市の仙巌園
世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の説明に聞き入る欧米からのクルーズ客=1日、鹿児島市の仙巌園
 鹿児島県への外国籍クルーズ船の寄港が、新型コロナウイルス下を経て再開した2023年3月以降、順調に回復している。寄港回数はコロナ前に迫る勢いで、にぎわいが戻りつつある中、クルーズ船の客層は買い物目的のアジア人から文化や体験を楽しむ欧米人に様変わり。受け入れる観光地や店側は言語やニーズに応えようと、もてなしに工夫を凝らす。

 鹿児島市の鹿児島本港区北ふ頭にフランス船籍「ルソレアル」(1万992トン)が入港した1日、同市の仙巌園は、日本庭園や御殿の造りに興味を示す欧米客であふれていた。

 以前は中国人を中心に売店での買い物が多く滞在時間も短かったが、欧米人になってからは、ガイドの案内に耳を傾けたり、ベンチにゆったり腰掛け桜島を眺めるなど、それぞれの時間を楽しんでいた。

 仙巌園では今年に入り、1万人を超えるクルーズ客が来園。うち9割以上を欧米人が占める。弓矢や甲冑(かっちゅう)を着ける体験が人気で、紬や竹を使った民芸品のほか、円安の影響もあってか薩摩切子や薩摩焼の高額品も品薄になるほど好調だ。

 業務企画課の平岡六太朗主任(38)は「お客さまのニーズの違いを調査し、体験型を充実させるなどサービスに違いを出していきたい。スタッフ全員が簡単な英語で対応できるよう勉強中」と話す。

 天文館でも欧米人の姿が多く見られるようになった。天文館むじゃき(同市)の前田華代専務(49)は「コロナ前と比べ、さまざまな国籍のお客さまが来るようになった。英語でもなく、何語か分からない時もあるくらい」と笑う。

 以前は英語、中国語、韓国語のメニューを用意していたが、現在はスマホの翻訳アプリで対応する。市のインバウンド観光推進支援補助金を活用し、7カ国語に対応できるタッチパネルの導入も検討中という。

 多くのクルーズ船で、ツアーに組み込まれる指宿市の砂むし会館「砂楽」も案内板やホームページなどを多言語で表示。英語ができる人材を雇うなど、対応に力を入れている。

 県港湾空港課によると、24年は6月末で91回の寄港を予定しており、コロナ禍前の最多156回(19年)を抜くペースだ。塩田康一知事も4月19日の定例会見で「昨年の125回は上回るだろう」と話す。

 県PR観光課の大薗昌吾観光クルーズ船担当参事は「フェリーや新幹線などを活用し、クルーズ客を各地へ呼び込み、経済効果を県全体に広げたい。自治体や民間と連携し各地で楽しめるプランを掘り起こしていく」と話した。