これが水俣病に対する国の本質か…慰霊式後、環境相との対話は1団体3分間、超えるとマイクの音が消えた 「最後まで言わせてやれよ」患者団体の怒り収まらず

 2024/05/02 11:38
国の対応に声を荒げる患者団体の関係者ら(左)=1日午後、水俣市の水俣病情報センター
国の対応に声を荒げる患者団体の関係者ら(左)=1日午後、水俣市の水俣病情報センター
 熊本県水俣市で1日開かれた水俣病慰霊式の後、環境省が主催した伊藤信太郎環境相との懇談会には、八つの患者・被害者団体が参加した。思いを伝える制限時間は1団体3分間。複数の団体は時間が超えると司会者にせかされ、話し続けるとマイクの音が消えた。団体は「被害者の声に丁寧に耳を傾けて」と憤った。

 「最後まで言わせてやれよ」。懇談会の終盤、怒号が飛んだ。高齢男性が亡くなった妻の症状や被害を訴えている最中にマイクの音が消えたからだ。見かねた別の団体が「私たちの時間を使って」と申し出た。

 続いて発言した水俣病被害者獅子島の会(鹿児島県長島町)の滝下秀喜会長(64)は、離島の患者が通院する際の交通費の補助などを求める要望書を早口で読み上げた。「懇談会は国のパフォーマンス。丁寧に話を聞く場に改善して」と話した。

 水俣病被害者の会の中山裕二事務局長(70)は「マイクの音量を調整したのか」とただしたが、環境省側は「不手際」と繰り返した。中山さんは「患者の声を聞く振りしかしない国の本質が表れた」と嘆いた。

 懇談会後の記者会見で伊藤環境相はマイクの音が消えた点について「意図的かどうかは知らない。声は聞き取れた」と説明。1団体3分は例年通りといい、帰りの新幹線や飛行機の時間を理由に挙げた。

 国と被害者団体は、水俣病の認定を巡り争いが続く。懇談会は大臣に直接伝えられる貴重な機会だ。伊藤環境相は新たな救済策を講じるかについて「現時点ではノーだが将来イエスになる可能性もある」と話した。

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