水俣病と聞くだけでうんざり…少女は鹿児島で暮らし〝心の重し〟が外れた。公式確認から68年…「今も被害は続いている」 相思社職員の28歳は、足元の小さな公害に目を向ける
2024/05/01 15:03
展示史料の案内などを担当する辻よもぎさん=25日、熊本県水俣市袋の水俣病センター相思社
相思社の近くで育ち、学校で繰り返し水俣病を学んだ。「水俣に生まれたからには使命感を持って学ぶべき」と言われているようで、当時は「水俣病」と聞くだけでうんざりしていた。
地元から一度出てみたいと、中学卒業後は進学せず、知人のつてで鹿児島県日置市東市来町美山のカフェに約4カ月、住み込みで働いた。
「水俣出身と知られたらけげんな目で見られるかも」。風土病と誤解されるなど水俣病被害者や発生地域に対し差別や偏見の目が向けられてきた問題は学んでおり、不安があった。しかし、客に出身地を伝えても重く受け止められることはなく地元への思いは徐々に変化した。「水俣病を含め、地元を見つめ直してみよう」との気持ちが芽生えた。
2015年、相思社にアルバイトで入り翌年就職。患者相談業務の中で病を夫婦間や子どもにも伝えられない人がいることを目の当たりにし「今も続く被害なのだ」と気付かされた。
今は、展示施設のガイドや環境に配慮した無添加石けんの販売を通じて水俣病の問題を発信する。水俣病が「過去の出来事」との感覚は消え、地元に暮らす自分も知らない埋もれた被害が少なくないと痛感する。
昨年から化学物質過敏症の原因となる「香害」に苦しむ。洗濯用合成洗剤や柔軟剤の香りで吐き気や頭痛に悩まされ、「本人にしか分からない『痛み』があることを知り、水俣病患者の苦悩と少し重なった気がした」と明かす。
水俣病を自らと結び付けるのは難しくても、身の回りの小さな公害は意識できる。「便利な生活を追い求めた先に公害は起きる。悲劇を繰り返さないために、大気汚染など身近な所から考えてみてほしい」と話した。
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