ほこらに刻まれた判読不明の文字…3D計測したら神社の棟札の記述と一致 技術力を誇示したかった?160年前の陶工たち

 2024/05/06 21:01
沈寿官窯の薩摩焼で作られた窯神とされるほこら=日置市東市来町美山
沈寿官窯の薩摩焼で作られた窯神とされるほこら=日置市東市来町美山
 薩摩焼で知られる鹿児島県日置市東市来町美山の沈寿官窯敷地にあるほこらに記された制作年や人名が、近くの玉山神社の棟札とされる陶板に書かれている年代、人物名と一致していることが分かった。文久元(1861)年、「朴十山」「朴正伯」など陶工の名前が刻まれている。ほこらも薩摩焼で作られており「窯神」と伝わる。調査した同市教委の下小牧潤さんは「窯神と神社、互いに深い関係性があったようだ」と話す。

 窯神の文字は以前から知られていたが、一部判読できない状態だった。下小牧さんが3次元(3D)計測でデータ化したところ、全文を読み取れ、陶板の棟札と同じ内容であることに気づいた。

 窯神と陶板には陶工のほか、「渋谷休阿彌」「八田甫悦」など藩の役人の名前がある。陶板は玉山神社の造り替えに伴うものとされ窯神も関連して作られた可能性があるが、沈寿官窯に伝わった経緯は分からない。

 神社の棟札は木、ほこらは石や木で作られることが多い。鹿児島国際大学の中園聡教授=考古学=は「わざわざ薩摩焼で作ることで、陶工たち独自の技術力やアイデンティティーを示したのかもしれない」と語った。

 十五代沈寿官さんは「これまで気づいていなかった情報をひもとき、つなげることで、往時の様子が立体的に浮かび上がる。面白い発見」と感謝した。