所属先が合わなければすぐ辞める…転職ハードル低い若者、頭抱える経営者
2024/05/04 11:54
人手不足の中、新戦力として期待される各企業の新入社員=9日、鹿児島市卸本町のオロシティーホール
測量やOA機器の久永(鹿児島市)は、この5年間で即戦力として期待できる中途を中心に約20人を採用できた。それでも久永修平社長(62)は頭を抱える。
隣の熊本県では台湾積体電路製造(TSMC)の進出があり技術職を中心に競合、若者の転職へのハードルも低くなったと感じる。「新卒は一括採用しても所属先が合わないとすぐ辞めてしまう。人手不足もますます加速するだろう」。今後もUIJターンを含め中途採用に力を入れる。
「コロナが収束し客足は戻っているが従業員がいない」とこぼすのは、ホテルや結婚式のサービスを請け負うパルコーポレーション(同市)の上塘裕二社長(65)。コロナ前後で学生の意識変化を痛感しているといい「コロナなどで影響を受けにくい業界を目指す傾向がある」。そのような業界は少ないと思いながらも、特にサービス業が避けられがちな現状を嘆く。
弓場貿易(同市)の弓場秋信社長(76)は「中途採用中心だが、ミスマッチがないよう能力をどう生かせるか見極めている」と離職防止に重きを置く。所属後も考え入社前からコミュニケーションを図り人柄を重視する。昨年採用した30代男性は今では欠かせない存在となり、目を細める。
いずれの企業も本年度、待遇改善の一環として、昇給を含め1万円程度の賃上げを実施。ただ「前向きな賃上げは少ない」と、金属加工製造・南光(同市)の上田平孝也社長(65)は明かす。県中小企業家同友会代表理事も兼ねており「業績が上がれば賃上げにも反映できるが、今はその逆。賃金を上げないと人が集められない」と中小零細企業の声を代弁する。
県中小企業団体中央会の小正芳史会長(75)も賃上げを含む待遇改善は必要としつつ、一企業だけの努力では難しい面もあると指摘する。「価格転嫁できないと賃上げにつながらないが、取引先や消費者から理解が得られるのか不安。まずは値上げが許容される環境づくりを」。社会全体で取り組む必要性を訴えた。
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