人種や国籍を越えて学ぶ機会これからも…青少年国際交流に尽力し33年、鹿児島市の貿易会社社長が渡航費支援で1000万円寄付

 2024/05/06 07:23
記念誌を手に活動を振り返る弓場秋信さん=鹿児島市卸本町の弓場貿易
記念誌を手に活動を振り返る弓場秋信さん=鹿児島市卸本町の弓場貿易
 鹿児島県内の中高生を東南アジアに派遣する県青少年国際協力体験事業は今年で33年目となる。立ち上げから携わるのが実行委員長の弓場秋信さん(76)=弓場貿易社長=だ。円安や原油高騰などで渡航費の負担が重くなる中、今春、運営事務局に1000万円を寄付した。「人種や国籍を越え手を取り合う大切さを学び、心の国際化を進める一助になれば」と願いを込める。

 体験事業は、協力隊の活動や発展途上国に対し理解を深めることを目的に弓場さんが1991年、県や国際協力機構(JICA)と連携し、県青年海外協力隊を支援する会など3団体を組織してスタートした。

 中高生が約1週間、派遣先の民家にホームステイし、青年海外協力隊員の活動を視察。学校なども訪問し交流を深める。マレーシアやタイなど7カ国に送り出した中高生は376人に上る。医者を目指すきっかけとなったり、国境を越えて友情を深めたりと現地でかけがえのない時を過ごす。

 弓場さんは72年、協力隊員としてマレーシアに赴いたことが人生の転機となった。「日々生きるのに懸命な人々を見て日本の豊かさを知った。もっと挑戦してみようと思った」。帰国し6年間で蓄えた1000万円を元手に弓場貿易(鹿児島市卸本町)を創業。今年3月、自身が起業時に投資した同額を、次は子どもたちの夢や未来に託そうと寄付を決めた。

 31回目となる本年度は7月21日~28日、カンボジア派遣を予定する。運営事務局の松下正・県国際交流協会専務理事(62)は「金銭面で諦めざるえない子もいるだけにありがたい」。弓場さんは「異文化交流は個々の違いを認め、尊重し合うことを教えてくれる。地球に生きる仲間として手を取り合う人が増えてほしい」と話した。