オトコ磨きかたしなみか、はたまた介護を見据えてか…利用者急増のメンズ脱毛 鹿児島の事情を記者が追う

 2024/04/27 07:02
脱毛施術を受ける男性=10日午後6時すぎ、霧島市国分中央5丁目のダツモウジャパン
脱毛施術を受ける男性=10日午後6時すぎ、霧島市国分中央5丁目のダツモウジャパン
 鹿児島県内で男性向けの脱毛店が増えている。性別にとらわれない美容の選択に加え、ひげそりの手間が省ける生活の質(QOL)向上や将来的な介護を見据えた配慮など多様な理由で需要が高まっているようだ。一方、行き過ぎたブームは同調圧力を生みかねないとの懸念もある。時代とともに変わる男性の脱毛事情を探った。

 4月中旬、霧島市国分中央5丁目のメンズ脱毛店「ダツモウジャパン」。カミソリ負けなど肌荒れに悩み、昨年末からひげ脱毛で通う同市の会社員柏木朋さん(26)は12回目の施術を受けた。「今はほとんど生えてこず、ひげそりの手間が省けて快適」。毛穴が引き締まりあか抜けたと言われるようになったという。

 昨年9月にオープンした同店は、新規客が4月までに140人を超えた。20代が27%と最多を占めるものの50代以上も13%。全世代に利用者が広がっており、ひげ脱毛が多い。蕪尾成海店長(23)は「肌の露出が増える夏に向けて脱毛する人が増加する。保湿も大切なので脱毛を機に美意識が高まる人も多い」と話す。

 介護が必要になった時、排せつの介助で負担をかけないよう脱毛する人もいる。年代が上がるにつれてアンダーヘア脱毛が増えているのが特徴だ。

 美容について調査・研究など行う「リクルートホットペッパービューティーアカデミー」によると、同社の予約サイトに登録する県内の男性向け脱毛店は2024年4月は28店舗で20年5月の7店舗から4倍に増えた。

 田中公子研究員(45)は「ここ2年で男性の需要が高まった」と分析。学校で性の多様性を学んだ若年層が男女問わず美容を楽しむようになったことや新型コロナウイルス下のリモート会議で顔を見られる機会が増え、ひげのそり残しを気にする中年層が増えたことが背景にあるという。

 介護脱毛も増えているが、介護にどれほど影響するのか。県介護福祉士会事務局の二丹昭博さん(36)は「排せつ物が毛に付かないことでより衛生面が保たれる面はある」としつつ、「毛の有無にかかわらずプロは個々の状態に合わせ適切に対応する。個人の自由だが、毛があると介護者に迷惑をかけるということはない」と強調する。

 鹿児島市中央町のメンズ脱毛店「MOW9」では、男性と女性の施術者を配置。個々の悩みに寄り添う。今村聡一郎代表(39)は「蒸れやにおいの軽減、スポーツのパフォーマンス向上、毛量を減らしたいなど理由はさまざま。毛の生えている状態を良くないとするのではなく、それぞれの考え方に寛容な社会になってほしい」と話した。