34年ぶり円安 苦悩するファミリー向け焼き肉店…輸入牛肉は仕入れ値1.5倍「今は利益を削るしか」 和牛農家はインバウンドに期待

 2024/04/26 17:03
輸入牛肉の仕入れ値高騰に苦悩する外食産業。メニュー再改定の動きもある
輸入牛肉の仕入れ値高騰に苦悩する外食産業。メニュー再改定の動きもある
 約34年ぶりとなる1ドル=155円台を付け、加速する円安基調は鹿児島経済にも影響を及ぼす。資材や食材を海外から輸入する企業は仕入価格の高騰に苦悩、世界情勢や人手不足による運送料の値上げなども加わる二重、三重苦状態に「価格高騰のスピードについていけない」とため息をつく。一方で、インバウンド(訪日客)に期待する声もある。

 「ここまで高くなるとは想像していなかった」と嘆くのは、なべしまホールディングス(鹿児島市)の横井晋哉取締役料理部長(47)。看板商品「なべしまカルビ」を含む輸入牛肉の仕入れ値は2022年の1.5倍になった。最近は米国の牛飼養頭数減少による価格上昇が円安とも重なり、5月の仕入れ値は4月と比べて1.3倍と上がり幅は顕著だ。

 昨年メニューを改定したが、物価高騰に追いつかず再改定を検討する。横井取締役は「ただ値段を上げればいいわけではなく、お客さまの満足度も追求しないといけない。今は利益を削るしかない」と苦慮する。

 輸入住宅を専門で扱うカナダプレイス(同市)は、資材価格が1年前と比べて3割ほど上がった。円安に加え、不安定な世界情勢や運送料の値上げも重くのしかかり、価格高騰の影響は木材に限らず玄関ドアやシンク、窓と幅広い。岩下優美社長(38)は「カタログ記載の金額が全然当てにならない状況。その都度、見積もりをとるしかない」。

 円安基調が続き、鹿児島銀行(同市)には海外仕入れ先の再選定や為替のリスク管理に関する相談が増えた。4月新設した国際ビジネス支援部で海外市場動向を調査し企業の輸出入支援に取り組むが、相談内容のほとんどはマイナスの影響。一部では海外から「日本製品は質がよくて価格も安い」との評価を好機と捉える企業もあるという。

 和牛を肥育し輸出にも取り組むうしの中山(鹿屋市)の荒木真貴専務(45)は「飼料価格の高止まりなどのデメリットは感じているが、インバウンドには期待している」と話す。新型コロナウイルスの影響が一服し、円安はインバウンド回復の追い風となっている。

 「日本の食文化を自国に持ち帰ってもらえれば、ステーキ用のサーロインやヒレだけでなく、すき焼き用の肩ローススライスといった他の部位も売りやすくなるだろう」と期待する。

 九州経済研究所(鹿児島市)の福留一郎経済調査部長(57)は、政府が為替介入したとしても、日米間の金利差が縮まらない限り円安傾向は続くとみる。「原材料が上がる中、内需だけに頼るのは厳しい。円安をチャンスと捉え海外に目を向けていくべきだ」と述べた。

 あわせて読みたい記事