6歳から車いすの私が妊娠。医者に心配されても「産める」と信じた。「ママ大好き」と言う娘が人生を輝かせてくれる
2024/05/07 07:22
「子どもという存在を得て精神的に救われた」と笑顔で話す新穂かおりさん=鹿児島市
かおりさんは、筋力低下などが現れる「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を生後7カ月で発症、6歳から車いす生活を送る。立つことはかなわず、腕は大きく動かせない。生活全般にヘルパーや家族のサポートを受ける。一人の時間帯は、就労継続支援事業所のライターの仕事や外出をして過ごすこともある。
鹿児島養護学校(現鹿児島特別支援学校)高等部の1年先輩だった夫は、左半身にまひがある。勤め先の霧島市までJRとバスで通う。友人だった2人は卒業後の同窓会で再会し、交際を始めた。
2009年に結婚、待ち望んだ妊娠が分かったのは13年12月。主治医に心配されても、かおりさんは妊娠前から「きっと産める」と信じていた。胎児の成長は順調だったが、8カ月で母体の安全のため帝王切開となる。1368グラムで生まれた女児を自宅に迎え入れるまでの2カ月間、家族で病院に会いに通った。
かおりさんは腕に抱きかかえたり、ミルクを与えたりと助けを借りながらできることをやってきた。夫は「夜泣きも熱発もほとんどなく、予想ほど大変ではなかった」と振り返る。すくすく育った長女は「家族でゲームしたり、外に遊びに行ったりするのが楽しいよ」と元気いっぱいだ。
かおりさんは、なるだけ言葉で愛情を伝えるようにしている。長女も「ママ大好き」とよく言ってくれる。「何よりうれしい。娘は人生を輝かせてくれる存在」
夫は長女の習い事の送り迎えをしたり、公園に連れ出したりする日々。「独身時代なら何事もだれかがやってくれると思いがちだったけど、子どものためなら動ける」と自身の変化を感じている。
障害がある人の出産や子育てを否定的にとらえる人もいる。かおりさんは「サポート者の確保など現実問題としての難しさを心配するのも分からなくはない」と複雑な心境をのぞかせる。
しかし「大変なことがあるにしても、諦めるよりチャレンジする方が人生が豊かになる。産む本人の意思が尊重されることが大切なのでは」と障害者の子育てを特別視しない社会を願う。
一人娘には自分の人生を楽しんで歩んでくれることが一番の望みだ。
(連載「みんなの子育て 鹿児島で支え合う」より)
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