「線状降水帯」大雨警戒強める 気象庁が事前予測を始めたが…専門家「精度は途上。気象情報注視を」

 2023/06/10 17:35
2021年7月、薩摩地方北部で線状降水帯の形成が確認され浸水被害が相次いだ=伊佐市大口堂崎(画像の一部を加工しています)
2021年7月、薩摩地方北部で線状降水帯の形成が確認され浸水被害が相次いだ=伊佐市大口堂崎(画像の一部を加工しています)
 九州南部が梅雨入りし、鹿児島県内では局地的な大雨をもたらす「線状降水帯」への警戒が強まっている。和歌山や静岡などで大きな被害が出た2日の記録的豪雨でも相次いで発生した。気象庁は発生を前倒しして発表する運用を始めたが、専門家は「予測精度は途上。気象情報を注視し早めの行動を心がけてほしい」と呼びかける。

 線状降水帯は発達した積乱雲が次々と生まれ線状に連なる降水域。今回は台風2号から温かく湿った空気が流れ込んだことなどが影響したとみられる。鹿児島地方気象台の高田朋尚主任技術専門官は「線状降水帯が発生すると、長時間同じ場所で強い雨が降るため、災害のリスクや規模が高まる」と説明する。

 気象庁は急ピッチで線状降水帯の予測精度向上を進める。2022年6月には「半日前予測」を開始。23年5月25日からは危険を認識してもらうために発生を最大30分早く発表する運用に踏み切った。ただ予測の対象エリアが広く、精度の低さが課題に挙がる。

 21年7月に線状降水帯が確認された鹿児島県の北薩地方。各自治体担当者は「他県の被害は人ごとではない」と気を引き締める。さつま町役場の角茂樹危機管理監(59)は「雨が強まる前に、いかに高齢者らに避難してもらうかが重要。気象庁の情報は早ければ早いほど助かる」と期待する。

 線状降水帯の発生は5段階で表す大雨・洪水警戒レベル4相当以上に位置付けられ、発表されたときには既に災害が起きている可能性がある。

 気象予報士でNPO法人防災WEST(熊本市)の早田蛍副理事長(36)は「局地的な豪雨は時間や範囲の予測が難しい。まずは警戒レベルを基に行動してほしい」と指摘。自分や家族がとるべき防災行動を時系列に整理する「マイ・タイムライン」の実践を勧めた。