鹿児島・獅子島で発掘したクレトラムナの歯化石は、日本の新生代始新世としては初の発見! 6,600万年前、隕石落下による大絶滅期をサメたちが生き残った証拠だった
2023/05/28 08:02
2006年に発見したクレトラムナの歯化石。長さ約1.7センチ、根の部分約1.2センチ。歯の大きさから、全長3メートルになる現在のネズミザメより大きかったと推測される
約6600万年前の白亜紀末、地球に飛来した巨大隕石によって、恐竜は鳥など小型の種類を残して絶滅しました。一方、海中では、絶滅を免れた生き物たちがいました。サメの仲間はその典型例です。
2006年、私は鹿児島県長島町獅子島北西部に分布する、地質年代で新生代古第三紀始新世(約5千万年前)の弥勒層群の白色砂岩から、黒光りする1本のサメの歯の化石(長さ1.7センチ)を発見しました。とがった大きな主咬頭の両脇に副咬頭(小さな牙のような突起物)が生えている、特徴的なサメの歯でした。
研究者との共同調査の結果、ネズミザメに近い仲間の「クレトラムナ」という種類であることが判明し、07年に論文発表しました。
クレトラムナという名前は、白亜紀を示す「クレト」と凶暴な魚を指す「ラムナ」が由来です。化石は、世界的には後期白亜紀~後期始新世(約1億年前~約4千万年前)の地層から、日本では白亜紀層から確認されています。福島県の双葉層群では、クビナガリュウ(フタバサウルス)の化石周辺からまとまって発見されており、フタバサウルスを襲った(死体をあさった)可能性が指摘されています。
獅子島の弥勒層から私が発掘したクレトラムナの歯化石は、日本の新生代始新世としては初めての発見でした。
獅子島では中生代の白亜紀層からもクレトラムナの歯化石が発見されていました。絶滅を挟んで中生代、新生代と連続する地質時代の両地層から出たのです。白亜紀末の隕石落下による環境の激変に、同じ海にいたクビナガリュウやアンモナイトは適応できずに滅びましたが、サメたちは生き残りました。獅子島の化石は、その貴重な証拠だったのです。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
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