「証拠がある以上、自分がしたのだと思う」 万引を繰り返しても人ごとのように繰り返す男。裁判官に今後を問われると「刑務所を出たら生活保護を受ける」
2023/01/30 11:00
男は缶コーヒーをエコバッグに入れて盗んだ(本文と写真は関係ありません)
千葉県出身。自衛隊に入隊し、店で働いていた時期もあったが、現在は住所不定、無職の独身。アルバイトをしても給料はパチンコ代に消え、万引を繰り返してきた。
22年春ごろ、仮釈放で出所後、更生保護施設に入った。門限や人間関係が嫌になり退所。コンビニでバイトをしたが、物忘れや客からのクレームがあり、9月に辞めさせられた。
生活保護を申請したものの、担当者と連絡を取らなくなり、受給しなかった。11月初旬、周囲の勧めで入院したギャンブル依存症専門の医療機関を「窮屈だ」と数日で飛び出した。
行き場を失い、金に困り、万引を重ねた。少なくとも60回、被害額は約17万円に上るという。
逮捕直後の警察の取り調べに「480円しかなく、缶コーヒーを買えばタバコが買えなくなる。どうせならお菓子(あめ)も盗もうと思った」と供述。約1週間後の調べでも「申し訳ないと思っていればしない」「ギャンブルと一緒で万引もくせになっている」と反省の色は見せず、「逮捕された状況は覚えていない」と次第に言葉を濁すように。検事は「都合の悪いところだけ記憶がないように見える」と厳しく指摘した。
「刑務所と行ったり来たりで周囲に迷惑をかけている」。弁護士が諭すと「ギャンブル依存が全ての原因。刑務所に入れば高齢の母の死に目に会えないかもしれない。病気を治し、仕事にも復帰したい」と更生の意志を示した。同時に、姉から「認知症の母に心配をかけるから家に帰ってくるな。連絡も取るなと言われている」とも明かし、肩を落とした。
「今後の生活はどうするつもりですか」。裁判官の質問に「刑務所を満期で出て、生活保護を受ける」と即答した。だが、「住む場所を見つけてもらわないと、自分では流れが分からない」と他者への期待と自分への諦めをにじませた。
1月24日の判決。裁判官は「手慣れた悪質な犯行で常習性は顕著。記憶がないとしつつも公訴事実を認め、更生の意思を示している」と求刑懲役3年に対し、1年10月の実刑判決を言い渡した。
孤独や生きづらさを抱え、目先の欲にとらわれてしまう点で万引と依存症は似ている。「同じ間違いを繰り返さず人に迷惑をかけない」。再び誓った男の背中に、罪を犯した自分の心と今度こそ向き合ってほしいと願った。
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