国内最大級の獅子島「ボーンベッド」。「恐竜に間違いない」…骨片の鑑定結果に思わずガッツポーズ。しかし、どんな恐竜か…謎は深まっていく

 2022/09/25 11:00
顕微鏡で見た獅子島の骨化石。網状の血管が発達していたことが分かり、恐竜の特有の構造と一致する(中島保寿氏提供)
顕微鏡で見た獅子島の骨化石。網状の血管が発達していたことが分かり、恐竜の特有の構造と一致する(中島保寿氏提供)
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 鹿児島県・獅子島での化石調査でわれわれ研究チームは、白亜紀の脊椎動物のものと思われる骨片を多数含む「ボーンベッド」を発見しました。その規模は国内最大級とみられます。ただ、何の骨かは不明でした。

 ボーンベッドの一部をサンプルとして回収しようと、ハンマーをふるいました。岩盤は非常に硬く、作業は難航しました。もともと海面下の場所です。どんどん満ちてくる潮に追われながら、何とかサンプル回収に成功しました。

 回収した岩の塊は、東京都市大学の中島保寿准教授の研究室に持ち込まれました。まずは岩から骨を取り出しました。取り出した骨を切断して磨き、顕微鏡で観察しました。

 薄く削った標本を顕微鏡で拡大すると、網状の血管が張り巡らされていることが分かりました。急速に大型化する動物に特有の構造で、白亜紀当時で該当するのは恐竜だけです。

 後日、中島准教授から「恐竜に間違いない」という鑑定結果を聞いた時、私は思わずガッツポーズを取っていました。獅子島のボーンベッドは、恐竜のものだったのです。

 しかし、どんな種類の恐竜か。なぜ個々の骨ではなく、かけらになるまで粉々に砕けているのか。謎は深まるばかりです。

 真実を解き明かすためには、さらなる調査と、大規模な発掘作業が必要です。現在、長島町と鹿児島県からの支援を待つ状態です。

 一連のボーンベッド発見の瞬間と骨化石分析の様子は、今年3月のNHKスペシャル「恐竜超世界 in japan」で放送され、全国から大きな反響がありました。獅子島での恐竜発掘は、日本中が注目するイベントになったのです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。鹿児島県長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県」より)

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