乳児の誤嚥防ぐには? 6カ月女児死亡で問い合わせ急増 専門家「食べるペースに合わせ焦らず慎重に」

 2023/06/10 21:03
 鹿児島県姶良市の認可保育所で4月、6カ月の乳児がおやつ後に急変、重体となり約40日後に死亡した問題は、食物の誤嚥(ごえん)による窒息の疑いがある。鹿児島県は5月、保育・教育施設の食事中の事故防止に向けた国のガイドラインを各施設に改めて送付。専門家は、乳幼児の誤嚥を防ぐには「子どもの食べるペースに合わせて、焦らず慎重に」と助言する。

 姶良市の興教寺保育園に通っていた6カ月の女児は、生のすりおろしリンゴと麦茶を与えられた後、あおむけに寝かせたところ急変した。誤嚥した物が何かは分かっていない。愛媛県では5月、8カ月の男児がリンゴを食べた直後に意識不明となった。

 「リンゴは加熱してあげた方が良いか」。鹿児島市の南部保健センターには、離乳食期の子どもを持つ保護者から問い合わせがあったという。2016年の国のガイドラインは「リンゴや梨などの果物は、離乳食完了期まで加熱する」と注意を促している。子どもの食事中の事故防止に詳しい大平智子医師(宮崎県立宮崎病院)は「リンゴはすりおろしてもかけらが残る可能性があり、軟らかくするために加熱した方が良い」と説明する。

 誤嚥は飲食物や唾液が誤って喉頭と気管に入ることで、国は「重大事故につながりやすい」と指摘。ガイドラインは、子どもに食べさせる際の注意点として(1)健康状態を職員、保護者が共有する(2)水分を適切に与える(3)眠くなっていないか確認する-などを挙げる。

 離乳食は、生後5~6カ月は「なめらかにすりつぶした状態」、7~8カ月「舌でつぶせる固さ」と進め方の目安を示す。「月齢によらず、窒息につながる可能性があると認識し、介助、観察する」よう促す。

 厚生労働省によると、5~6カ月の初期は「食べることに慣れ、飲み込むことを覚える時期」。離乳食は1日1回が目安で、多く食べるよりも口に入った食物を飲み込めるようになるのが目標としている。

 鹿児島県小児科医会会長で、鹿児島市のゆあさこどもクリニックの湯浅由啓院長は「どんな物も詰まらせる可能性があるため、子どもの食事は注意深く慎重に、飲み込んでいるか確認しながら時間を掛ける必要がある」と話す。特に保育所での誤嚥防止には「離乳食は家で食べているものより1段階軟らかくして与えてもいいのでは」と提案した。