会津と薩摩、実は仲が良かった?…城の払い下げで便宜図った新資料発見
2023/06/03 18:03
旧会津藩家老の山川浩から薩摩藩出身の川崎祐名に宛てられた手紙。右側には「大山大臣」や「若松城」の文字が見える=鹿児島市の黎明館
1890(明治23)年、陸軍省管轄だった全国各地の城郭跡が払い下げられることになり、2月12日には元藩主や官庁が希望した際は公売せず、「払い渡し」するよう閣議決定された。若松城は2月19日に容保の長男、容大(かたはる)の名前で代金2000円を支払った領収書が残っている。城は戊辰戦争で被害を受け、天守閣などの建物は明治初期に取り壊されていた。
手紙はいずれも旧会津藩家老の山川浩が、薩摩出身で陸軍会計局長だった川崎祐名(すけな)に宛てたもの。
1通目は閣議決定前年の89(明治22)年6月7日付とみられる。「過日大山(巌)大臣より若松城お払い下げ(中略)請願致せば公売に付せず払い下げになる」との内示があったと触れ、これを伝えられた旧主家(松平家)は「藩祖以来の縁故があるのみならず、戊辰の紀念でもある。ぜひともお払い下げ願いたい」と応じたとある。続けて「どのような手続きにて請願いたせばよろしいか」と川崎に尋ねる内容だ。
もう1通は払い下げの領収書と同じ日付の礼状で、「ご配慮をもって首尾よく相調い(中略)。旧主(容保)よりもよろしく御礼申し上げくれますよう」と記す。崎山健文学芸専門員(53)は「大山の胸中には、戦後の苦難もあった会津に対し、事前に情報を伝えることで資金調達の時間ができると考えたのかもしれない」と話す。大山の妻・捨松は山川の妹という間柄でもあった。
手紙は川崎の子孫が黎明館に寄託した資料に含まれていた。会津若松市の郷土史家野口信一さん(73)は「会津にとって薩摩は仇敵(きゅうてき)という意見もあるが、両者の間には表に出ない深い結びつきがあったことを証明する資料」と語った。
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