途中退席しかけた下鶴市長に県議が「待った」 再登場の後、質疑わずか12分…鹿児島市スタジアム構想、異例の県議向け説明会

 2023/05/27 08:03
説明会の冒頭、県議にあいさつする下鶴隆央市長=26日午後4時、鹿児島市の県市町村自治会館
説明会の冒頭、県議にあいさつする下鶴隆央市長=26日午後4時、鹿児島市の県市町村自治会館
 鹿児島市が鹿児島港本港区エリアで構想する多機能複合型のサッカースタジアムなどを巡り、下鶴隆央市長は26日、県議会鹿児島市・鹿児島郡区選出の議員に市政説明会を市内で開いた。「県と市が共有する課題を情報共有したい」と目的を述べ、連携と理解を求めた。

 市長が県議向けに説明会を開くのは異例。下鶴市長は冒頭のあいさつ後、庁内での打ち合わせを理由に途中退席しようとした。県議から同席を求められ、いったん退席後、執行部の説明後に再び会場入りして県議の質問に応じた。

 スタジアム構想について執行部は「ドルフィンポート(DP)跡地、住吉町15番街区を含む本港区エリアで検討する」と市議会の場と同じ内容を説明。「オール鹿児島で取り組むことは県と合意している」と構想に理解を求めた。

 一方で県が新総合体育館を計画するDP跡は「厳しい」との見方を示し、住吉町も「敷地拡張などが必要になる」と課題を挙げた。

 両候補地での整備が見通せず、市議会で浮上している北ふ頭を新たな候補地として考えているかとの質問に、下鶴市長は「(エリアごとの機能を決める)ゾーニングにスタジアムが入るか、県の利活用検討委員会の議論を注視したい」と従来の説明にとどめた。

 説明会開催には市議から「相手や順番がおかしい」と反発も上がっていた。下鶴市長は県議との質疑や報道陣の取材に「市議会を飛び越えるつもりは全くない」と強調した。

 説明会には同区選出の全17議員のうち12人が出席、市議数人も傍聴した。スタジアム整備のほか、こども医療費助成制度、土地区画整理事業など7項目を執行部が説明した。

■「物足りない」

 「公務があるなら別の日に開けばいい」。冒頭あいさつを終え、会場を去ろうする下鶴隆央市長を平良行雄議員(共産)が引き留めた。「質疑には応じる」と言って、再び会場に現れた市長と県議のやりとりは、わずか12分。26日の市政説明会には複数の県議から「物足りない」と不満の声が上がった。

 市が事前に県議に送った説明内容はスタジアム構想など3項目だったが、当日になって7項目に増えた。説明会の時間は1時間。最長でも1項目10分余りの時間配分になり、「議論が深まらない。資料を事前に配布すべきだ」(松田浩孝議員・公明)と苦言も。途中で質問が打ち切られる場面もあり、終始執行部ペースで進んだ。

 いったん退席した下鶴市長が会場に現れたのは7項目の説明終了後。予定終了時刻の1分前だった。

 柳誠子議員(県民連合)は「あのまま市長が帰っていたら、何のために出席したのか分からない。スタジアム構想が議論の中心になると思っていたが、他の項目と同じような取り扱い。なぜ今開いたのか」と首をかしげた。

 宝来良治議員(自民)は北ふ頭をスタジアム候補地とするか真意を尋ねた。下鶴市長から踏み込んだ発言はなく、「想定通りだったが、市長がいるのに物足りなかった」と残念がった。

 「有意義な機会だった」と評価の声も聞かれた。福司山宣介議員(県民連合)は「市長の考えを直接聞くのは良いこと。スタジアムのこともあって斜に構える声があるが、市議会での説明以上の中身は出ないと予想していた」と話した。