開館1年余で100万人突破 天文館「まちなか図書館」の魅力は制約の少なさ? 本目当て以外の入館者も
2023/05/26 20:59
天文館図書館の交流スペース。イベントがない時はテーブルや椅子が並び、利用者は思い思いに過ごしている=鹿児島市千日町
5月下旬の休日、乳幼児の親子2組が、商業施設のBGMが聞こえる図書館内のカフェにやってきた。程なく子どもたちは児童書コーナーの遊び場へ。親たちは胸元の赤ちゃんに視線を配りつつ、会話を楽しんでいた。館内でくつろぐ子ども連れの姿は、見慣れた光景になっている。
一方、平日の夕方は仕事や学校帰りに読書や勉強する人が目立つ。ビジネス本を読んでいた同市日之出町の会社員男性(42)は「バス停のすぐそばで便利」。鹿児島大学2年の寺村陽さんは「Wi-Fi環境があり、オンラインで授業も受けられる。疲れたらカフェで一休みできるのもいい」と、月2、3回利用する。
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天文館図書館は、県内初の、商業施設内にある公営図書館として昨年4月にオープンした。開館から1カ月で想定を超す20万人近くが訪れ、5月の大型連休は4000人に達する日もあった。松田優子館長は「連休に来館者数が急増するのは、商業施設内の図書館ならでは」と実感を込める。
館内にはカフェが併設され、ふた付きの飲み物であれば持ち込み可。会話の制限はなく、親子連れは子どもたちの声を心配しなくていい。松田館長は「制約が少なく職員から注意を受けないことが、快適さにつながっているのでは」と推測する。
市内にある県立図書館、市立図書館と入館者1人当たりの貸出数(2022年度)を比較すると、天文館図書館は0.3冊と、唯一1冊に満たない。それでも平日1000~1500人、休日2000~3000人が訪れる。
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館は、出入り口の仕切りがなくオープンなつくりが特徴。図書館と意識せず入館する人もいるという。
交流スペースでは講演会やワークショップ、コンサートなど多彩な内容のイベントを随時開催。「何かやっている」という期待感は、閲覧や貸し出しが目的でない人が足を運ぶきっかけになっている。松田館長は「新鮮さで利用してもらった1年だった。今後はリピーターをどう増やしていくかが課題になる」と話す。
中心市街地や駅ビルに立つ「まちなか図書館」は、全国で増えつつある。宮崎県の都城市立図書館は、デパート跡に移転して5年がたつ今も県内外から来館者を呼び込む。前田小藻(あや)副館長は「本の配置や見せ方をこまめに変えて、利用者が来るたびに新鮮な印象を持てるよう工夫している」と語った。
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