バス停の木製ベンチを嗅ぐ住民ら 添えられた手紙に「感動した」 読んでみると納得する粋な内容 

 2021/02/27 10:20
伐採した街路樹を再利用している武岡小学校前バス停のベンチ=鹿児島市武岡2丁目
伐採した街路樹を再利用している武岡小学校前バス停のベンチ=鹿児島市武岡2丁目
 2月に入り、鹿児島市武岡地域の複数の読者から、バス停に設置されたベンチに「感動した」との声が「こちら373」に寄せられた。メールで届いた写真には木製の立派なベンチと、贈り主からの心温まる手紙が添えられていた。

 南国交通と市営バスが通る武岡小学校前バス停(武岡2丁目)。上りと下りそれぞれに、学校の正門前に植えられていた街路樹のクスノキを伐採し、再利用して作られたベンチがある。直径約40センチの幹をそのまま脚に使い、縦50センチ、横150センチ、厚さ10センチの天板が乗る重厚な作りだ。

 手紙はバス停の足元にあった。A4版1枚に約450字。市から工事を請け負い、ベンチを贈った竹之内組(入佐町)が書いたものだ。要約すると次のような内容だった。

 <40年以上、武岡のまちと子どもたちを見守った街路樹も役割を終えました。住民の皆さまのご理解とご協力で工事は無事に終わり、せめてもの恩返しと感謝を込めて、伐採した街路樹をベンチにして寄贈したいと考えました。クスノキは香木です。ベンチに顔を近づけ、その歴史と香りを感じてみてください。バスを待つ少しの時間、爽やかな気持ちになれると思います>

 同社によると、工事は昨年10月下旬から約3カ月間続いたという。成長したクスノキの根が歩道を傷めることから7本伐採。バス停にベンチがなかったため、現場の作業員らが話し合い、最も大きかった1本を再利用することになったという。

 製材業者に製作を依頼し、工事が終わった2月初旬、地元町内会に寄贈し設置した。現場監督の藤下謙次さん(43)は「街路樹が無くなって味気なくなった分、少しでも通りの彩りになればうれしい」と話した。

 近くに40年以上住み、週に2回バスを利用する西紀子さん(73)は「粋な文面に感激した。バスに乗らない日もバス停に行き、木のぬくもりと香りを楽しんでいる」と笑顔を見せた。